大判例

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東京地方裁判所 昭和58年(特わ)174号 判決

本籍

千葉県船橋市宮本五丁目六二七番地

住居

千葉県習志野市谷津五丁目三八番一号

会社役員

佐藤辰雄

大正五年八月二八日生

右の者に対する所得税法違反被告事件について、当裁判所は検察官上田勇夫出席の上審理を遂げ、次のとおり判決する。

主文

一  被告人を懲役一〇月及び罰金一八〇〇万円に処する。

二  被告人において右罰金を完納することができないときは、金一〇万円を一日に換算した期間被告人を労役場に留置する。

三  被告人に対し、この裁判確定の日から三年間右懲役刑の執行を猶予する。

四  訴訟費用は被告人の負担とする。

理由

(罪となるべき事実)

被告人は、東京都江東区亀戸一丁目一三番地一九号に事業場を置き、「佐藤特殊金具製作所」の名称で冷蔵庫・冷凍庫用扉金具の製造販売業を営んでいたものであるが、自己の所得税を免れようと企て、収入の一部を除外するなどの方法により所得を秘匿した上、

第一  昭和五四年分の実際総所得金額が四八三三万四九四二円(別紙(一)修正損益計算書参照)あったのにかかわらず、昭和五五年三月三日、東京都江東区亀戸二丁目一七番八号所在の所轄江東東税務署において、同税務署長に対し、昭和五四年分の総所得金額が一〇二五万六六九六円でこれに対する所得税額が二二九万九四〇〇円である旨の虚偽過少の所得税確定申告書(昭和五八年押第四〇九号の1)を提出し、そのまま法定納期限を徒過させ、もって不正の行為により昭和五四年分の正規の所得税額二一九二万六七〇〇円と右申告税額との差額一九六二万七三〇〇円(別紙(四)税額計算書参照)を免れ、

第二  昭和五五年分の実際総所得金額が五一三四万七五六〇円あった(別紙(二)修正損益計算書参照)のにかかわらず、昭和五六年三月七日、前記江東東税務署において、同税務署長に対し、昭和五五年分の総所得金額が一〇三九万七二四七円でこれに対する所得税額が二三四万三九〇〇円である旨の虚偽過少の所得税確定申告書(同押号の2)を提出し、そのまま法定納期限を徒過させ、もって不正の行為により昭和五五年分の正規の所得税額二三二一万九八〇〇円と右申告税額との差頒二〇八七万五九〇〇円(別紙(四)税頒計算書参照)を免れ、

第三  昭和五六年分の実際総所得金額が五八四八万八四八三円あった(別紙(三)修正損益計算書参照)のにかかわらず、昭和五七年三月一三日、前記江東東税務署において、同税務署長に対し、昭和五六年分の総所得金額が一〇九一万一八六八円でこれに対する所得税額が二四七万六六〇〇円である旨の虚偽過少の所得税確定申告書(同押号の3)を提出し、そのまま法定納期限を徒過させ、もって不正の行為により昭和五六年分の正規の所得税額二七二一万三七〇〇円と右申告税額との差額二四七三万七一〇〇円(別紙(四)税額計算書参照)を免れ

たものである

(証拠の標目)

判示全事実につき

一  被告人の当公判廷における供述並びに検察官に対する供述調書四通

一  大森好の検察官に対する供述調書

判示各事実特に別紙(一)(二)(三)の各修正損益計算書中の公表金額及び別紙(四)の税額計算書中の申告額につき

一  押収してある所得税確定申告書三袋(昭和五八年押第四〇九号の1ないし3)及び所得税青色申告決算書六袋(同押号の4ないし9)

判示各事実特に右各修正損益計算書中の各当期増減金額欄記載の内容につき

一  収税官吏作成の調査書二九通

一  大森好作成の申述書

一  江東東税務署長作成の証明書

別紙(四)の税額計算書の所得控除、税額控除の額につき

一  検察官岡崎芳高作成の捜査報告書

(法令の適用)

一  罰条 判示第一、第二の各所為につき、行為時において昭和五六年法律第五四号による改正前の所得税法二三八条一、二項、裁判時において改正後の所得税法二三八条一、二項(刑法六条、一〇条により軽い行為時法の刑による。)

判示第三の所為につき、右改正後の所得税法二三八条一、二項

二  刑種の選択 いずれも懲役刑及び罰金刑の併科

三  併合罪の処理 刑法四五条前段、懲役刑につき同法四七条本文、一〇条(最も重い判示第三の罪の刑に加重)、罰金刑につき同法四八条二項

四  労役場留置 刑法一八条

五  刑の執行猶予 懲役刑につき刑法二五条一項

六  訴訟費用の負担 刑事訴訟法一八一条一項本文

(量刑の事情)

被告人の本件犯行は昭和五四年分から昭和五六年分の三か年分の所得税合計六五二四万〇三〇〇円を逋脱したもので、その逋脱税額の正規税額に対する割合は約九〇%になっており、その犯行の態様は売上の一部を除外し仮名預金を設定するなどの方法により所得を秘匿して虚偽過少の申告をしていたものでことさら証憑の隠滅等は伴わず比較的単純なものと認められること、被告人は本件が発覚してからは調査に協力し既に修正申告をなして本税を納付し、反省していると認められること、被告人には交通違反で罰金に処せられた以外には何らの前科前歴がないこと、その他本件に顕れた諸般の事情を総合して主文のとおり量刑する。

よって、主文のとおり判決する。

(裁判官 池田真一)

別紙(一)

修正損益計算書

佐藤辰雄

自 昭和54年1月1日

至 昭和54年12月31日

〈省略〉

〈省略〉

〈省略〉

別紙(二)

修正損益計算書

佐藤辰雄

自 昭和55年1月1日

至 昭和55年12月31日

〈省略〉

〈省略〉

〈省略〉

別紙(三)

修正損益計算書

佐藤辰雄

自 昭和56年1月1日

至 昭和56年12月31日

〈省略〉

〈省略〉

〈省略〉

〈省略〉

別紙(四)

税額計算書

〈省略〉

18欄の計算 54年47,250,000×65%-7,240,000=23,472,500

55年49,990,000×65%-7,240,000=25,253,500

56年57,339,000×65%-7,240,000=30,030,350

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